アグリプラットフォームコンソーシアムについて

概要

高水準農業技術と流通を持つ国、日本

わが国の農業は、世界的に見ても高水準の技術が実用化されています。また、 高品質な農産物が比較的低廉な価格で供給できるような流通が実現されてきました。
農業技術の発展においては、「匠」と呼ばれるような熟練技術を有する篤農家が重要な 役割を担っております。今後の農業分野の持続的な発展のためには、その時々の自然環境や 作物の状態を的確に把握し、最適な農作業を識別して適用していく「匠の技」をさらに 高度化するとともに、篤農家の権利を確保する仕組みを整えた上で、より多くの農家に 利用可能とすることが重要です。
「匠の技」とは、その時々の自然環境や作物の状態を的確に把握し、最適な農作業を識別して 適用していく「判断」です。従来取り組まれてきた「匠の技」の汎用化、マニュアル化は、 匠が実施する「農作業」の手順を記述することには成功していますが、その時々の状況において 異なる「判断」を記述することが出来ないために具体的な成果を供出することができませんでした。

これに対して、「自然環境や作物の状態」と「農作業」の関係を分析していくことで、篤農家が 自ら行っている「判断」をより明確に意識することが可能となり、さらなる高度な「判断」による 「農作業」を生み出していくことが可能となります。
その前提条件として、篤農家たちの熟練技術を知的財産の観点から明確に保護し、わが国の財産 である篤農家に対して社会が還元していく仕組み作りが必要とされます

また、同様の状況は流通に関しても生じています。熟練した流通事業者の方々は、農産物の状態を見極め、 最適な状態で消費者に送り届けるために必要とされる農産物輸送方法に関する「判断」を行います。 例えば、一定温度で輸送することが必ずしも最適ではなく、農産物の生育環境や熟成状況等に応じて 適切に変化させた環境を作り出すことが必要となる場合があります。こうした「判断」に基づいた環境に よって、農産物を最適な状態で消費者の元へ送り届けることが、商品価値の最大化につながります。 この「判断」を無視し、作業手順やデータ交換等の仕組みのみを標準化したとしても何の価値も生み出しません。

「匠の技」を個々の生産や流通の現場に細分化した取り組みから、総合的な「価値ある農産物を生産・販売する仕組み」 に変えていく「標準化」戦略を実現することが、今後の我が国の農業分野全体の価値を向上し、農業分野の 「Made in Japan」品質とブランドを確立することに繋がります。

研究テーマ

慶應義塾大学は、平成21年度において、農林水産省と共に、AI研究会において篤農家の有する「匠の技」の 普及啓発に関する取り組みを進めてきました。また、平成20年度、平成21年度において、経済産業省からの 委託事業として、熟練流通小売事業者の「判断」に基づいた生鮮食料品の販売ソリューションに関する取り 組みを進めてきました。「生産」と「流通」の双方を結びつけることで、「価値ある農産物を生産販売する 仕組み」が見出されてきました。

本コンソーシアムは、これらの活動に基づき、「匠の技」、すなわち熟練農家や熟練流通小売事業者の「判断」 に着目した上で、我が国農業の中長期的な発展の基礎となる、以下の活動を実施します。

慶應義塾大学は、既にインターネットの普及啓発に関わる活動を長年展開してきました。本コンソーシアムは、 これら既存取り組みを踏まえながら、世界有数のわが国の農業技術に裏付けされた、「攻める農業」を実現する ための、単なる標準化の議論に終わることがない、「価値ある農産物を生産販売する仕組み」を具現化する プラットフォーム作りを目指していきます。
「匠の技」の展開は、食料自給率の向上に留まらず、高品質農産物の諸外国への輸出や、発展途上国の 食料問題解消へと繋がっていきます。これら成果は、農林水産省、経済産業省と連携し、わが国全体での 取り組みとなるよう、産官学が連携して広めていきます。

アグリプラットフォームコンソーシアムの活動イメージ

構成メンバー

  • 村井 純          慶應義塾大学 教授
                                  コンソーシアム共同代表:情報通信/情報ネットワーク
  • 神成 淳司      環境情報学部 教授
                                  コンソーシアム共同代表:農業情報政策、コンピュータサイエンス(産業応用)
  • 植原 啓介      環境情報学部 教授:コンピュータネットワーク
  • 山下 春幸      大学院 政策・メディア研究科 特任教授
  • 中島 伸彦      大学院 政策・メディア研究科 特任准教授
  • 信朝 裕行      大学院 政策・メディア研究科 特任准教授
  • 樽谷 芳明      大学院 政策・メディア研究科 特任准教授